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浪漫万丈

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●久住昌之 くずみまさゆき




1958年、東京都生まれ。漫画家、漫画原作者、文筆家、ミュージシャン。81年、和泉晴紀とのコンビ「泉 昌之」として『ガロ』において『夜行』でデビュー。実弟・久住卓也とのユニットQ.B.B.では『中学生日記』が第45回文藝春秋漫画賞を受賞。94年に始まった谷口ジローとの『孤独のグルメ』は現在も不定期で『SPA!』で掲載中。松重豊主演でテレビ東京系でドラマ化され、この7月より新シーズンがスタート。09年より『Eleganceイブ』で連載中の水沢悦子との共著『花のズボラ飯』も12年にドラマ化。ミュージシャンとしても、5月上旬現在ですでにライブを30本以上敢行。すべて新作描き下ろし、漫画版『野武士のグルメ』セカンドシーズンが6月27日より幻冬舎plusで新連載開始。www.gentosha.jp



なぜか若者の心をつかむ
定年退職の「ジジイの話」

「生命を生み出した地球の味だ。生命を育んだミネラルの味だ。干物をうまくしたお天道様の味だ。海原を泳ぎまわった生き物の味だ」

アジの干物にかぶりつきながら、こんなことを言う。スティーブン・キングの『スタンド・バイ・ミー』みたいな話へとつながっていく。あるいは、夏の平日、昼間っから瓶ビールと焼きそば。扇風機の回るひなびた店で、間口を額縁に見立てて通り過ぎていく人間模様を眺める。

主人公は定年退職した香住 武。エッセイとして書いた『野武士のグルメ』を土山しげるが漫画化した。

「僕が漫画原作やるときは、基本的に3つのやり方があるんです。ひとつは和泉(晴紀)さんや弟とやるときがそうなんだけど…こういう感じ(カバンから紙束。コマ割りがされ、人物や背景が描かれフキダシにはセリフも)。谷口(ジロー)さんとの場合はページだけ割って、内容は文章で書く。それと写真を200~500枚つけて渡す。『野武士』のような、もう書いたエッセイの漫画化は初めてでしたね」

和泉晴紀とは「泉昌之」名義でのデビュー以来30年以上のコンビ。弟は久住卓也。QBBというユニット名で活動している。谷口ジローは『孤独のグルメ』での作画者である。

「エッセイだと主人公は自分。漫画に俺が出てきてもしょうがないなあって思ってたら土山さんが香住武っていう主人公を作ってくれた。最初は谷口ジローを意識して、どう違う雰囲気にするかですごく悩んだって土山さん言ってたけど、さすがはプロ。面白いね!」

久住さんは原作者として漫画家と組むことが多いけれど「3回目までは何も言わない」がポリシー。

「3回やると、だいたい方向性が見えるから。そこから、絵ができたあとにちょっとネームをいじらせてもらう。絵に合わせてセリフをもっと面白くしたいから。『孤独のグルメ』でも、谷口さんが絵を完成させてから直してます。ドラマの方でも井之頭五郎の、食べるシーンのモノローグは8割がた変えてますね」

それでスタッフに「あ、五郎になってきた!」っていわれるとすごくうれしい。俺らしさではなく、キャラらしさを立てるための作業だ。

「『野武士』の最後に収録の『謎のトースト定食』は、漫画化が始まってから書いたので、かなり漫画を意識しましたね。元は『孤独のグルメ』用に取材した話だったんですよ。どうにも漫画にならなくて作品にしなかったんだけど、野武士でやると面白いんじゃないかなって」

主人公はジジイである。だが…。「土山さんのお兄さんが定年退職してて“あー、ようやく早起きせずに済む~”って言ってんだって(笑)。“小学生からの夢がかなった!”って。それで小学校のクラス会やってるらしいよ。同級生と遊んでるわけで、まるっきり小学生だよ! その定年の感じは面白いなあと思って」

ジジイ漫画をヤングが読む謎の答えはそのあたりかもしれない。

「“いいなあ…”っていう感じね(笑)。それは大事だよね。僕は主人公を書くときは“うらやましい人”にするんです。僕が小食なんで、井之頭五郎は大食漢。あいつは酒飲めないけど、いっぱい食えるのがうらやましい(笑)。ラーメン食べたけど、焼きそばも食べたいなあ…っていうところで頼めるんです。それで自分で“いいなあ”って思ってる(笑)」

では、そもそも野武士はなぜ?



プロデューサーではなく
自分の面白さを考える

「細々と食い物のことを考える連載をしていると、一方で“うるせー!”って言いたくなっちゃうんです(笑)。蕎麦屋の作法とかさ、どう飲めとかどうしろとか、どこの何がエライとかそういうのがイヤだなと思ってくるときがあるんですよ。そもそも野武士ってグルメじゃないでしょ(笑)。荒々しく店に入ってきて“親父、めしだ!”っていうようなイメージ。それに憧れる部分がある。自分はそうはなれないんだけど…っていう、そういうところ」

たとえば和泉晴紀さんとの『食の軍師』は、もつ焼きや寿司のオーダー順、とんかつの一切れ一切れの“使い方”を考察したものだ。三国志の時代になぞらえ、陣形を名付け、店に、ライバルに勝利する。

まさに久住節。一方で、そんな自分を笑い飛ばしたい自分もいる。それが野武士だ。腹の中に一人飼っておいて、こんなとき、野武士ならどうするだろうと、ときどき伺いを立てる。その粗雑さにゆだねてみる。


「今は細かい時代だからね。いちいちスマホを見なきゃ店は決められないのか。男は刀一本、裸一貫! …みたいなことを思う部分もあって。もちろん僕だって、スマホで調べることもあるけどさ(笑)、そうするとなんか同じ所に収まっちゃうんだよね。とにかく自分がしなくちゃわからなかった! みたいなところへの憧れもあって…」

デビューは22歳。『夜行』という作品で、劇画タッチの古い絵を描く和泉晴紀と組み、夜行電車の中で、お弁当のおかずを食べる順番に悩む青年の姿を描いた。

「和泉さんの絵は、当時タモリが流行らせた“ネクラ”っていうイメージにぴったりの古い画風で、この絵でくだらない内容の漫画が描いたら異様だろうなって思ったんです」


あるメジャー誌の編集者には田舎に帰れと言われたが、めでたく『ガロ』に掲載。『夜行』が収録された単行本の『かっこいいスキヤキ』は再版を繰り返し、今も売れている。

「『孤独のグルメ』を始めたころ、谷口ジローさんは『坊っちゃんの時代』を描かれてて評価がすごく高まってたんですね。さしたるオチもないものをあんなに緻密に描いてもらって“悪いなあ”って思ったし、僕はすごく恐縮したんだけど、その分“なるほどそりゃヘンだよね”って納得できた。1話目は正直自分でも面白いのかどうかわからなくて(笑)。でも3話まで読むともうちょっと読みたくなって。単行本はすぐ絶版になったんだけど、2年半後に文庫が出て、ジリジリ売れて、年に2回再版する状態が7~8年続いたら、新装版が出て、連載はじめて20年目にドラマ化ですからね(笑)。ありがたいことですよ」

09年からは“エロのないレディコミ”と呼ばれる『Eleganceイブ』で水沢悦子とコラボ。若い主婦の日常&ごはんをほのぼのとした絵柄とタッチで描く『花のズボラ飯』が人気を博し、これまたドラマ化。

まさにプロデューサータイプ、かと思いきや、違うのだという。


「だって俺、何が売れるかなんてわからないもん(笑)。自分が見て面白いのは間違いないから、やろうって思うけど。あと『花のズボラ飯』みたいに読者の、とは考えるけど…」

幼少のころから誰かと一緒にするのが好きだったという。幼稚園児のときはお母さんに命じてゴジラやヤマタノオロチの絵を描かせた。

「小学校のときには仲良しのイバラキくんと『弱虫げんたろう物語』っていう、すぐ泣いて鼻血が出たり漏らしたりしちゃうヤツの話を書いてたし、高校生のときはフォークユニットね。自分だけだと恥ずかしいけど“相手が歌うんだ”って思うと、どんな歌詞も書けちゃうじゃない? 和泉くんもそんなこと言ってたよ。すごくヘンな原作が来ても“俺のせいじゃない。久住が考えたんだ”って思うと、むしろ本気で描けるって。誰かとやると、そういうところが楽だよね。自分ができないところはできる人と組んでやる。運命共同体とか、“アイデンティティ”とか言い始めるとしんどいから、“一緒にやれるところはやろう”って程度の軽みで。その中で面白いことができればいいんじゃないの? 和泉くんとも土山さんとも一緒…で、自分にとって面白いものができりゃいいかなって思ってるだけ」


フリーランスだから何があるかはわからない。急に仕事が半減することも過去に経験している。

「だから未来はわからない。具体的な自分のこと、何を面白がってどうやって生きて、どんな見た目になってるかとかって全然想像つかないよね。ただ、“今絶対自分にとってこれは面白い”っていうのをやってると、少なくとも、自分の中で自分は古びていかないような気はしてます。まあ僕は誰かとやってるからそれで結構救われてるんだけどね」



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