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- Date:2024年11月22日
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乃木坂46の勢いが止まりません。現在、アイドル誌はもちろん、エンタメ総合誌、テレビ誌、漫画誌など雑誌業界のメインとなり、AKB48グループやジャニーズなどをサブに回すこともあるほどの人気です。
CMでも『バイトル』『明治ロカボーノ』『はるやま』『マウスコンピューター』などに出演。さらに6月1日、『オリコン2017年上半期“本”ランキング』写真集部門で、メンバーのソロ写真集が「トップ7を独占した」ことが明らかになりました。
ただ、テレビ番組への出演は、コアなファン向けの冠番組がほとんど。ファン層を広げられるゴールデンタイムの番組には、わずかしか出演していません。前田敦子さん、大島優子さん、篠田麻里子さんらが活躍していたAKB48の最盛期よりも圧倒的に少ないのはなぜでしょうか。
◆「ビジネスに強くエンタメに弱い」スタイル
テレビ出演が増えない最大の理由は、乃木坂46のアイドルイメージそのものにあります。
清楚・清純な美少女キャラは、諸刃の剣。「穏やかで優しい」優等生のような外見や発言は、目の前のファンを魅了することができる一方、多くの人々に顔と名前を覚えてもらうことが難しいのです。
移り変わりの早いアイドル業界でAKB48が長きに渡って活躍している理由の1つは、キャラの濃さと多彩さ。アンチを作り、バカ扱いをされることも少なくありませんが、だからこそAKB48のメンバーは、バラエティーのスタッフに「このように使おう」という発想を与えられるのです。
乃木坂46のメンバーたちも冠番組では、さまざまな笑いのセンスを見せていますが、それでもグループとビジュアルの持つキャライメージは強く、「バラエティーを盛り上げる戦力にはなりにくい」のが現実。アイドルに限らず現在の芸能界は、「まずはキャラありき」という考え方で、特にテレビのバラエティーは「キャッチーなキャラをいくつ持っているか」がオファーの鍵を握っているのです。
乃木坂46の「清楚・清純な美少女」「穏やかな優等生」というキャラは、現在の芸能界で希少価値が高いのは間違いありません。しかし、ビジュアル先行のスタイルは、ライブ、握手会、写真集などの「客から直接お金を稼ぐビジネスに強い」反面、バラエティーやドラマなどの「出演で報酬を得るエンタメには弱い」のです。
◆グループのオファーばかりになる理由
過去を振り返ると、1970~1980年代のアイドルは、ほぼすべて乃木坂46と同じような「清楚・清純な美少女」「穏やかな優等生」というキャラでした。ただ、ブレイク時の爆発力こそすごいものの、わずか2~3年程度で露出が激減。当時も現在もファンたちは、「はかないキャラだからこそ熱狂できる」ことをどこかで分かりながら応援しているだけに、乃木坂46のメンバーも、現在の人気に安心はしていないでしょう。
写真集売上トップの白石麻衣さんが8月で25歳になるように、主要メンバーの年齢は軒並み20代前半。清楚・清純なアイドルとしては高齢だけに、「バラエティーやドラマなどのテレビ番組、映画や舞台への出演を増やしたい」、あるいは「モデルやアーティストなどの専門分野に力を入れたい」と考えているはずです。
メディア関係者の目線では、AKB48のメンバーが“売れっ子のテレビタレント”であるのに対して、乃木坂46のメンバーは“人気モデルや宝塚の娘役”のような存在。だから乃木坂46へのオファーは、キャラのあるタレントとしてではなく、美形グループとしてのオファーばかりになってしまうのです。
では、この状況をどう変えればいいのでしょうか?
乃木坂46のメンバーである以上、テレビ番組やイベントでの発言や、SNSでの発信など、「グループのイメージから逸脱しない言動が求められている」のが、彼女たちのジレンマ。たとえば、生駒里奈さん、高山一実さん、秋元真夏さんが、ときどきバラエティーに出演していますが、コメントのさじ加減に難しさが表れています。
また、活動の場が限定されるため、「トークスキルが上がらず、さまざまな現場を経験できない」という点も、グループイメージによるデメリットの1つ。今のところ、「自由な言動や活動がしたいのなら、グループを卒業するしかない」というのがつらいところです。
◆絶好調だからこそ透けて見える不安
明らかに仕事は増えていますし、ファンから求められるうれしさもあるでしょう。しかし、彼女たちは、「全国・全世代への知名度が上がらない」「ソロのオファーが少ない」「芸の幅が広がらない」という不安と戦っているはずです。
運営サイドにしてみれば、2期生・3期生を育てることでグループのイメージを保つことはできるでしょう。しかし、着々と年齢を重ねる1期生メンバーにとっては、グループばかりではなく、自分のことを考える時期に差しかかっているのかもしれません。ただ、乃木坂46のメンバーには、他のアイドル以上に女性ファンが多いこともあり、さまざまな可能性が広がっているとも言えます。
現在絶好調だからこそ、透けて見える彼女たちの不安。表面的なイメージだけでなく、そんな内面にも注目すると、より乃木坂46のメンバーが魅力的に見えるのではないでしょうか。
【木村隆志】コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。