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- Date:2024年11月22日
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http://topics.jp.msn.com/sports/number/column.aspx?articleid=5413905
「バッティングは常に10割を目指す」好調でメジャー定着目前の川崎宗則。
メジャー挑戦3年目。
ブルージェイズの川崎宗則選手が、ここ最近、チーム内で存在感を増し続けている。昨年に引き続き、今シーズンもマイナー契約からスタート。そんな中、6月17日に2度目のメジャー昇格を果たした。
チームに主力選手の故障が相次いだことも重なり、7月11日に右脚ハムストリングの張りで途中交代するまで、23試合連続で先発出場を果たすなど、フル回転の働きをみせている。
昨年もホセ・レイエス選手の長期離脱に伴い、代役ショートとして数多く先発出場してきたが、昨年とは大きな違いがある。
それはバッティングだ。昨年までのメジャー通算打率は2割1分8厘に留まっていたものの、今年は再昇格直前まで在籍していた3Aで3割5分7厘を記録(6月に出場した10試合)。メジャーに昇格してからも安定した打撃を披露している。
7月の月間打率は自身最高の3割7厘(20試合以上出場選手の中でチーム3位)を記録し、シーズン後半戦に入ってもずっと2割8分前後の高い打率をキープしている。
「実際のところカワサキは本当にいいプレーを続けている。堅実な守備を披露しているだけでなく、バットも振れておりチームのために重要なヒットも放っている。後半戦に入ってもチームにとって大きな要素になっている」ジョン・ギボンズ監督はここまでの川崎の活躍を手放しで賞賛している。
少しでも“やり返す”ために……川崎が考えたこと。
では川崎自身は、今シーズンの打撃についてどう考えているのだろうか。
「やられている回数が多いからですよ。1年目、2年目、そして3年目の今年もです。人間誰だって、こうやってやられているんだから、ちょっとこうしてみようと思うもんです。
2012年はこういう球でよくやられたと、そして2013年はこうしてやられた。じゃあ2014年はどうしようか、そうやって少しずつ(やり返す)確率を上げられるようにやっていく。その結果なんです。
去年よりその確率が少しだけ上がっているとは思いますが、自分の中ではまだまだやられている印象の方が大きいんです。
それは何故かというと、やられるのが多いのがバッティングだから。なので、バッティングに関して突き詰めるのは僕は好きじゃない。野球はあくまでトータル。守備、走塁、身体の状態も含めて考えて、バッティングだけに囚われてはいないです」
走攻守すべてのための身体づくり。
川崎の中ではバッティングはあくまで野球の要素の1つでしかない。このオフもバッティングに関して何か特別なことをやってきたわけではなく、走攻守すべてがきちんとできる身体づくりだけを心がけてきたのだという。
本人も語っているように、バッティングで着実に成績を残せるようになっているのは、これまでの失敗から学んだ経験値にほかならない。川崎はこんな表現でも説明をしてくれた。
「ピッチャーの球質というのも3年目の今年は1年目より知って当然だし、2年目より知って当然ですよね。今の方が1年目、2年目より嫌でも球質がわかっている。それだけやられているわけだから。その経験は大きいと思います」
5、6年間迷い続けているバッティング。
だが成績を残す一方で、自分のバッティングにはなんの手応えも感じていないという。「バッティングに関しては自分の感覚が全然ないし、ここ5、6年ずっと悩みっぱなしですよ。若い頃は『こんな感じだ』とか言ってたんですけど、そこからまた迷ってきて……。ここ最近、すごく難しくなってきてます。
こっちの人たちから学んで『こういう感じかな』と思うけど、よかったと思えば、次悪かったりとその繰り返しで、バッティングに関しては何一つ良くないと思う。
歳を重ねるにつれて守備、走塁とか、自分の身体についてのことはわかってきたけど、バッティングの技術はわからないことばかりです。(対戦する投手に関しては)コーチから聞いているので、自分の中である程度の枠組みの中でこうしたスイングをしていかなきゃというのはある。
それは、3年目で去年よりはしやすくなったことは確かです。でも“去年よりは”の話。今年もスイング自体は去年と変えてないし、とにかくわからないことだらけです。日本のプロ野球でもいいピッチャーが多かったけど、こっちに来たら来たで凄いピッチャーばっかり。本当にバッティングは大変です」
3年目にメジャーに定着した田口壮との共通点。
こんな話を聞いているうちに、川崎がある人物とダブってきた。それは、メジャーに挑戦したばかりの頃の田口壮選手だ。
オリックスでFA権を取得し、カージナルス入り。メジャー1年目の2002年キャンプではオープン戦後も1人残り、黙々とバットを振り続ける田口の姿があった。
「自分のイメージと実際の球にズレが出てしまっているんですよね……」今まで経験したことがないメジャーならではの球質に対応できず、明らかに苦しんでいた。
結局、田口は1年目の開幕はマイナーからのスタートを余儀なくされ、2年目もマイナー中心の生活。メジャーに定着できるようになったのは3年目からだった。3年間、自分のバッティングを模索し続けたが、メジャーに定着してからは、安定したバッティングを披露してきた。
常にメジャーとマイナーの当落線上にいるという境遇。
さらにバッティングのみならず、境遇面でも現在の川崎は当時の田口に似通っているところがある。指揮官から評価される活躍を続ける一方で、故障中の復帰選手が復帰間近になる度に、メジャー当落線上の選手として川崎の名前が挙がってくる。
それは、内野手の中で自由にマイナーに降格できるオプション権を有しているメジャー在籍3年未満の選手が、川崎を含め数えるほどしか存在していないからだ。
当時の田口も、ベテラン揃いのカージナルスの中で、2年目まではチームの都合でメジャーとマイナーの間を行き来していた。
さらに田口は、メジャーに定着してからも主力級の出場を続けながら、結局一度も守備での“定位置”を手に入れることはできなかった。そして現在の川崎も、定位置を持たずチームの方針に合わせ守備位置を変更させられている。
「10割を目指している。2割2分も9分も一緒」
だが、外野、内野の違いはあれど、田口同様に位置が変わっても、首脳陣を満足させているプレーを続けているからこそ、現在も先発で起用されているのだ。その根底には川崎の中に深い“野球愛”があるからだろう。
今でも、野球を始めたばかりの野球少年のように、“野球が上手くなりたい”という探求心が満ちあふれ、隙あらばベテラン、若手を問わず他の選手たちのプレーに目を配り、吸収しようとしている。
川崎がバッティングに関して悩んでいるというのも、実はこの飽くなき探求心の現れでもあるのだ。
「自分は10割を目指している。2割2分も2割9分も一緒です。ほかの野球選手がどう思っているか知らないけど、自分は(野球が)10回のうち7回失敗してもいいスポーツだとは思っていない。10回のうち10回成功したいという気持ちでいつも打席に入ってます。確かに、自分が普通の考えではないのかもしれないけど、だからこれから先も一生変わらないと思います」
川崎がブルージェイズで手に入れつつある“唯一無二”。
ブルージェイズは現在、熾烈な地区首位争いを続けている。そのためにも戦線離脱中のエドウィン・エンカーナシオン選手、アダム・リンド選手らの主力組の早期復帰が待たれている。
つまり、川崎がこのままメジャーに残ったままシーズンを終える保証は何一つ存在していない。だが田口がカージナルスでそうであったように、川崎はブルージェイズの中で着実に“唯一無二”の存在になりつつある。
もし、ブルージェイズが21年ぶりのシャンパンファイトを味わうことがあるとすれば……そのクラブハウスには必ず笑顔ではしゃいでいる川崎の姿があるはずだ。
(菊地慶剛 = 文)