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- Date:2024年11月22日
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赤いボディーにシロクマが描かれた日本コカ・コーラグループの自動販売機は、夏場の各種イベント会場にも設置されている。実はこの自販機、朝7時から深夜23時までの最大16時間、冷却のために電力を使わず、夜間だけ冷却する「ピークシフト自販機」だ。
東日本大震災直後の平成23年夏、電力不足が深刻になる中、大手飲料メーカーなどでつくる全国清涼飲料工業会は、東京電力管内の自販機約87万台の冷却機能を3交代で止めることを迫られた。これを機に飲料最大手として、日常から昼間の電力削減に先行して乗り出した。
飲料関係の記者の間で、7月31日に行われた日本コカ・コーラの会見が話題になっている。ティム・ブレッド社長が会見で、ピークシフト自販機の国内設置台数が6万台を突破したことを表明。
さらに「過去2年間の投資200億円と同等の投資を継続し、平成32年までにピークシフト自販機を半数以上にする」目標を明確に語った。
通常、外資系は今後の事業目標について経営トップが口にすることはほとんどなく、日本コカ・コーラも例外ではなかった。にもかかわらず投資額、設置目標を明言したのは、「それだけピークシフト自販機の普及に真摯(しんし)に取り組むことの決意を示した」(同社関係者)といえる。背景には強い危機感がある。
震災直後の23年4月。当時の東京都の石原慎太郎知事がパチンコと並び、自販機を「典型的な電力の浪費」と指摘。それが業界の輪番稼働につながっただけでなく、自販機不要論が広がる懸念も高まった。
自販機がなくなれば、同社の飲料ビジネスは成り立たなくなる。そこで自主的な取り組みとしてピークシフト自販機の開発を急いだ。
すぐにグループの社長会直轄のプロジェクトがスタート。コードネームは「アポロ」。米航空宇宙局(NASA)の月への有人宇宙飛行計画からとった。
プロジェクトリーダーであるプラットフォーム企画グループの中里泰雄グループマネジャーは「昼間に電力を使わず、冷却を維持する前人未到の計画。その上、次々に開発を進めていく。アポロと一緒だ」と命名の由来を説明する。
基本的な考え方は、気温が上がる昼間も自販機内や飲料の温度を上げないことだ。まず従来の発泡ウレタンの10分の1の厚さで10倍の断熱性能を誇る真空断熱材に切り替えた。外形サイズや収納本数を変えないことが条件だった。「エコのため、性能面で何らかの犠牲が出ることは許されない」(中里氏)からだ。
さらに冷却方式では、今までの自販機の常識を覆した。これまでの自販機は、収納した飲料のうち販売直前のものだけを冷やす「ゾーン冷却」だ。多くは自販機の下の方で、収納した飲料の3分の1だけを冷やす。
一方、ピークシフト自販機は全体、そしてすべての飲料を冷やす仕組みにした。昼間は冷却せず、夜間に冷やした温度を維持させるピークシフト機では「蓄冷材の役割を飲料自体にもたせる」(中里氏)という発想だ。
24年8月には、暑い町で有名な岐阜県多治見市と埼玉県熊谷市などで実際にテスト機を起き、実用に耐えうることを確認。設置を本格化した25年は目標を12%上回る2万8000台をピークシフト機に切り替えた。26年末までに7万3000台を設置する計画を8万3000台に上方修正しており、32年に向けて計画を加速させている。(平尾孝)